2020年に、前任の興梠征典先生から日本神経放射線学会の事務局代表を引き継がせていただいておりましたが、2022年に本学会が任意団体から一般社団法人に移行したことに伴い、理事長に就任いたしました。理事長にご推挙くださりました旧運営委員の先生方に厚く御礼申し上げます。伝統ある学会の初代理事長を拝命し、大変光栄に思いますとともに、本学会の益々の発展に尽力したいと考えておりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
神経放射線は、脳を含めた神経系の画像診断・画像下治療 (IVR)・放射線治療を扱う学問分野です。脳は複雑な構造かつ非常に高度な機能を持ち、人を人たらしめている臓器ですが、疾患は、血管障害・腫瘍・変性疾患・炎症性疾患・感染症・免疫疾患・代謝性疾患・中毒・外傷・奇型など多岐にわたり、疾患の種類が最も多い臓器でもあります。神経放射線医学は、画像を用いて、このように多岐にわたる神経疾患の診断・治療をする学問分野であり、神経放射線学会は、神経放射線医学に関する会員の研究発表、知識の交換、国際交流を求め、学術の発展に寄与することを目的としています。放射線科医のみならず、脳神経外科医や脳神経内科医、小児科医も会員であることも本学会の特色です。
本学会では、2021年に第50回学会を開催しました。50周年を記念する事業のひとつとして50周年記念誌の編纂に加わりました折、本学会が現在のかたちで存在しているのは、本学会最優秀論文賞の名称にもなっておられる加藤俊男先生をはじめとする諸先輩方のおかげであることを改めて認識しました。加藤先生は本学会を社団法人化すべく、文部省(当時)に申請されましたが、翌年に急逝されたため、法人化が頓挫したとのことです。それから約半世紀が経過し、本学会は一般社団法人となりましたが、法人化は加藤先生のご遺志を継がせていただくことでもありましたため、その点でも大変意義深いことでした。法人化に際しましては、法人化推進委員会の先生方とともに、これまでの当学会の良いところをできるだけ残すような定款となるようにつとめました。
神経放射線医学は、MRIやCTなどの画像診断装置や撮像技術の開発とともに発展してきましたが、最近では、人工知能の応用も加わり、さらなる進歩が期待されています。血管内治療のデバイスや高精度放射線治療もめざましい進歩を続けています。学会の開催形式は、COVID-19対策がきっかけとなり、世界中でリモート参加やオンデマンド配信が普及してきています。本学会でも、50周年記念事業の一つとして会員専用ページにおける過去学会の抄録集の閲覧を可能としましたが、さらに、年次大会の教育講演動画の配信など、ICTを活用しつつ会員ベネフィットを拡充していきたいと考えております
皆様のご支援、ご協力をよろしくお願い申し上げます。
一般社団法人 日本神経放射線学会
理事長 三木 幸雄 (大阪公立大学 教授)